研 究
第25回日本生体電気刺激研究会報告
徳竹忠司 記
日本生体電気刺激研究会は、その名前の示す通り生体電気刺激に関する研究会であり、参加されている方のほとんどが整形外科の医師であります。従って研究会で報告される内容は整形外科領域のものとなります。この研究会の以前の名称が骨電気刺激研究会であったことから、話題の中心は「骨」の電気刺激に関するもので占められています。骨の電気刺激に関しては、1953年に骨折部に直流電流を流すことにより骨の成長修復が起こることが発見されて以来、通電装置の開発と臨床応用が行われてきており、最近では細胞レベルで電気刺激の影響の検討もおこなわれています。
25回を迎えた今回の研究会は3月29日に神戸国際会議場で開催されました。2題の特別講演、5題の基礎研究報告、6題の臨床研究報告、2題の症例報告が行われました。臨床研究報告の中に末梢神経損傷に対する修復術後の筋萎縮を予防する目的で行った,埋込電極による持続的な筋電気刺激が有効であったとの報告がり、これは術後の機能回復をより良いものとする方法として、今後適応範囲が増えることが期待されます。
次に今回我々が報告をした「低周波ハリ通電刺激が末梢循環に及ぼす影響」の概略を紹介します。低周波鍼(ハリ)通電療法とは,東洋医学的物理療法の一つである「鍼」を電極として低周波通電を行う施術方法である。この施術方法は中国において行われていた「ハリ麻酔」が1970年代に世界的に報道されたことを契機に,各地で基礎的・臨床的な研究が種々多数行われて来た。我々は低周波鍼通電を刺激部位による独自の分類として@骨格筋、A脊柱椎間関節部、B体性神経、C皮下結合組織、D反応点の5つに大別している。
【目的】低周波鍼通電療法(EAT)における刺激の違いが刺激筋及び末梢部の循環動態に及ぼす影響の違いを明らかにすることを目的とした。刺激の違いとは,周波数の違いにより起こる筋収縮の様式の違いを意味し,1Hzは間欠的な筋攣縮・30Hzは連続する筋強縮・間欠的30Hzは間欠的な筋強縮を意味する。
【方法】男性10名(23〜40歳)を対象に室温26℃・湿度50%の恒温恒湿室内にて仰臥位両下肢露出で右腓腹筋に対し1Hz・30Hz・間欠的30Hzおよび無刺激をそれぞれ25分間・1週以上の間隔をあけて行なった。観察項目として深部体温(左右腓腹筋・足底,前額中央)・皮膚温(左右腓腹部・足底)は実験開始から終了まで1分間隔で記録し,指尖容積脈波(左右足第1指)・血圧(右上腕)・瞬時心拍数は通電前と通電終了後20分まで5分間隔で測定を行った。
【結果】体温変動の指標とした前額部深部体温は各刺激群とも下降傾向を示し群間における差はなく、腓腹筋深部体温は通電開始後25分で1Hzが0.6±0.2℃と他の群に対し有意な上昇を示した(p<0.01)。次いで変化量が大きかったものは間欠30Hzであった。足底部深部温・皮膚温は刺激群において下降傾向を示し変化量の左右相関は各群ともr=0.8前後で高い相関性を示した。また血圧・瞬時心拍数の変化量には差は認められなかった。
【考察および結語】各刺激時の体温変動および血圧・心拍数の変化に群間で差がなかったことより腓腹筋深部体温の上昇は局所的な筋収縮による反応であり,この温度上昇を循環促進の結果と考えるとEATによる筋内循環の促進には間欠的な筋収縮を起す刺激が持続的な強縮を起こす刺激よりも有効であり,特に1Hz通電のような低頻度刺激で攣縮を繰り返し起こすことの出来る周波数が有効であると考える。 この報告に関連したものとして,24回研究会で報告した1Hz低周波鍼通電の骨格筋深部温度に及ぼす影響に関する論文を,日本生体電気刺激研究会誌(JJBERS)11巻(43−48.1998)に投稿した。
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